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多発性硬化症は増えている?
世界の患者数と2040年予測をわかりやすく解説
多発性硬化症(MS)は、脳や脊髄などの中枢神経に炎症が起こり、
神経の働きが障害される病気です。手足のしびれ、力の入りにくさ、
見えにくさ、歩きにくさなど、さまざまな症状がみられます。
若い世代で発症することが多く、長く付き合っていく病気であるため、
患者さん本人だけでなく、ご家族や社会への影響も小さくありません。
今回ご紹介するのは、1990年から2021年までの世界のデータを使い、
多発性硬化症の負担を調べ、さらに2040年まで予測した研究です。
この研究からは、MSの「今」と「これから」が見えてきます。
【多発性硬化症の患者数は増加 ただし年齢調整では大きな悪化なし】
今回の研究では、世界全体でMSの新たな患者数、死亡数、
DALY(障害調整生命年)が詳しく解析されました。
DALYとは、病気によって健康な生活が失われた年数を示す指標です。
少し難しい言葉ですが、「その病気が社会全体に与える重さ」を
表す数字だと考えるとわかりやすいです。
研究では、1990年から2021年にかけて、MSの新規患者数は
世界全体で増えていました。死亡数やDALYの総数も増加しています。
一方で、人口の高齢化や人口増加の影響をならした
「年齢調整率」でみると、発症率はほぼ横ばいでした。
死亡率やDALY率はわずかに低下していました。
つまり、MSそのものが急激に悪化しているというより、
世界の人口が増え、高齢化も進んだため、
絶対数として患者さんが増えている面が大きいと考えられます。
これは医療の進歩とも関係している可能性があります。
診断しやすくなったこと、治療が進歩して長く生活できる方が増えたことも、
患者総数の増加に影響しているとみられます。
【多発性硬化症は女性に多い 地域差と社会格差も大きい】
MSの大きな特徴のひとつが、女性に多いことです。
この研究でも、発症、死亡、DALYのいずれでも、
女性の負担が一貫して高いことが示されました。
多発性硬化症は、もともと女性に多い病気として知られています。
背景には、免疫の違い、ホルモンの影響、環境要因など、
いくつもの要素が関わっていると考えられています。
また、地域差が大きいことも重要なポイントです。
社会経済状況が高い地域では、MSの発症や診断が多く把握される一方で、
医療アクセスが乏しい地域では、十分に診断されていない可能性もあります。
この研究では、地域ごとの格差や、社会経済的な違いによる
不平等も明らかにされました。
特に死亡やDALYには、なお大きな格差が残っていました。
つまり、MSは単に「病気そのもの」の問題だけではなく、
早く見つけられるか、適切な薬を使えるか、
リハビリを受けられるかといった医療体制の差が大きく影響します。
MSでは再発を抑える治療だけでなく、歩行や手の動き、
疲れやすさ、生活機能を支えるリハビリもとても大切です。
長く生活の質を保つためには、早期診断と継続支援が欠かせません。
【2040年の多発性硬化症予測 禁煙と早期診断がこれからの鍵】
将来予測では、2040年に向けて、世界全体の年齢調整死亡率と
DALY率は、ゆるやかに低下していくと見込まれました。
これは前向きな結果といえます。
ただし、安心しきれる内容ではありません。
絶対数としての患者負担は今後も続く可能性があり、
地域差や医療格差も簡単にはなくならないと考えられます。
研究では、喫煙が重要な修正可能な危険因子として示されました。
修正可能な危険因子とは、生活習慣の見直しなどで
減らせる可能性がある要因のことです。
MSは遺伝だけで決まる病気ではなく、環境要因も関わります。
これまでにも、喫煙、ビタミンD不足、肥満、
EBウイルス感染などが関連すると指摘されてきました。
その中でも喫煙は、予防の観点から特に重要です。
たばこは発症リスクだけでなく、病気の進行にも
悪影響を及ぼす可能性があるため、禁煙の意義は非常に大きいです。
さらに重要なのは、早く異変に気づくことです。
しびれ、見えにくさ、ふらつき、力の入りにくさなどが続く場合、
「疲れのせい」と自己判断せず、早めの受診が大切です。
MSは今の医療でも完全に治すのは簡単ではありません。
それでも、早期診断、適切な治療、リハビリ、生活管理によって、
症状や進行を抑えながら生活の質を保てる可能性があります。
今回の研究は、MSが世界的にみて依然として大きな病気であり、
今後も公衆衛生の重要課題であることを示しました。
同時に、予防、禁煙、医療アクセス改善の大切さも教えてくれます。
多発性硬化症は、決して珍しいだけの病気ではありません。
若い世代の生活や仕事、家庭にも影響しうるからこそ、
正しい知識を持ち、早めに対応することが大切です。
当院からのお知らせ
手足のしびれ、力が入りにくい、ふらつく、見えにくいなどの症状は、
脳や脊髄、末梢神経の病気が隠れていることがあります。
「様子を見よう」と思っているうちに、診断が遅れることもあります。
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、
内科・脳神経内科・リハビリの視点から、
しびれ、歩きにくさ、ふるえ、頭痛、もの忘れなど幅広く診療しています。
那覇市・浦添市・沖縄県で、しびれや神経症状、歩行障害、
多発性硬化症を含む神経の病気が心配な方は、
シーサー通り内科リハビリクリニックへご相談ください。
Tan J, Han D.
Global, regional, and national burden of multiple sclerosis from 1990 to 2021 and projections to 2040: A comprehensive analysis from the global burden of disease study.
Multiple Sclerosis and Related Disorders. 2026;108:107027.
https://doi.org/10.1016/j.msard.2026.107027
