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コロナ後の物忘れ・集中力低下は改善できる?認知リハビリの効果を認知症専門医が解説
ロングCOVIDのブレインフォグに認知リハビリ
仕事や日常生活の改善につながる可能性
新型コロナウイルス感染症から回復した後も、物忘れ、集中力低下、
頭がうまく働かない感覚などが長く続くことがあります。
この状態は「ブレインフォグ」と呼ばれ、ロングCOVIDでみられる代表的な
症状の一つです。疲労や頭痛、睡眠障害を伴うことも少なくありません。
2026年7月、医学雑誌『JAMA Network Open』に、ロングCOVIDによる
認知機能低下に対する認知リハビリの効果を調べた研究が発表されました。
研究では、患者さん自身が選んだ生活上の目標に取り組むことで、通常の治療
だけを受けた人より、目標を達成できる程度が大きく改善しました。
「記憶力そのものを元通りにする」というより、残っている力を上手に使い、
仕事や家事を行いやすくする治療として注目される結果です。
【ロングCOVIDとブレインフォグの症状】
ロングCOVIDとは、新型コロナ感染後に症状が3か月以上続き、良くなったり
悪くなったりしながら、日常生活に影響を与える状態です。
認知機能低下では、記憶だけでなく、注意力、情報を処理する速さ、段取り、
言葉の出やすさなど、複数の働きが影響を受けることがあります。
例えば、文章を読んでも内容が頭に入らない、会議中に話についていけない、
複数の家事を順番に進められないといった困りごとが生じます。
検査結果がほぼ正常でも、以前より仕事に時間がかかり、帰宅後は何もできない
という方もいます。本人にしか分かりにくい症状である点も大きな負担です。
また、認知機能低下には睡眠不足、うつ状態、不安、貧血、甲状腺疾患、薬の
副作用などが関係する場合もあり、症状だけで判断することはできません。
まずは詳しい問診と診察を行い、必要に応じて血液検査、認知機能検査、
脳画像検査などを組み合わせて原因を確認することが大切です。
【目標型認知リハビリで日常生活が改善】
今回の研究は、イギリスの3施設で行われたランダム化比較試験です。
30歳から60歳までのロングCOVID患者78人が参加しました。
参加者には、新型コロナ感染後3か月以上続く認知症状があり、検査でも
少なくとも2つの認知領域に低下が確認されていました。
38人は認知リハビリを受け、40人は通常診療を受けました。認知リハビリは、
週1回、1時間の個別セッションを合計10回行う内容でした。
治療では、患者さん自身が生活上の大切な目標を3つ選びました。例えば、
「休憩せず30分間、週2回レポートを書く」といった具体的な目標です。
支援には、予定を決める、作業を小さく分ける、リストや視覚的な目印を使う、
環境を整える、疲れる前に休むといった方法が用いられました。
3か月後、目標達成度は認知リハビリ群で平均7.84点、通常診療群で
平均4.97点となり、認知リハビリ群で明らかに高い結果でした。
改善効果は6か月後にも維持されました。3か月後に臨床的に意味のある改善を
示した人は、認知リハビリ群で84.2%、通常診療群で52.5%でした。
より大きな改善を示した割合も、認知リハビリ群65.8%に対し、通常診療群は
15.0%でした。研究中に治療関連の有害事象は報告されませんでした。
オンライン形式でも実施できたことから、通院による疲労が強い患者さんや、
遠方に住む方への支援方法としても期待されます。
【認知リハビリの効果と研究の注意点】
重要なのは、すべての認知機能が大きく改善したわけではない点です。
一部の実行機能や処理速度には改善がみられましたが、効果は限定的でした。
記憶、注意、言語機能の多くの検査や、疲労、睡眠、不安、うつ症状については、
通常診療群との明確な差が認められませんでした。
つまり、認知リハビリは脳の能力を一律に高める治療というより、限られた
認知資源を効率よく使い、具体的な生活目標を達成する治療と考えられます。
「物忘れを完全になくす」ことだけを目標にせず、メモを決まった場所に置く、
午前中に重要な仕事をするなど、生活を組み直すことが重要です。
一方、参加者は白人や大学教育を受けた人が多く、他の地域や年代にも同じ結果が
当てはまるかは、今後さらに検証する必要があります。
治療を受けたこと自体による期待や、支援者と話す時間の差が結果に影響した
可能性もあります。今回の研究だけで効果を断定することはできません。
それでも、目標型の認知リハビリが日常生活の改善につながり、その効果が
6か月後まで続いたことは、患者さんにとって希望となる結果です。
【よくある質問・Q&A】
Q.ブレインフォグは認知症なのでしょうか?
A.必ずしも認知症ではありません。ロングCOVIDでは、注意力や処理速度の
低下が中心となることが多く、認知症とは原因や経過が異なります。
Q.認知リハビリでは何を行いますか?
A.生活上の困りごとを具体的な目標に変え、メモ、予定表、作業の分割、
休憩方法、環境調整などを患者さんに合わせて練習します。
Q.市販の脳トレでも同じ効果がありますか?
A.単純な脳トレだけで、仕事や家事が改善するとは限りません。本人にとって
重要な生活目標に結び付けて練習することが研究の大きな特徴です。
Q.疲れても訓練を続けた方がよいですか?
A.無理は禁物です。ロングCOVIDでは、活動後に症状が悪化することがあります。
体調を確認し、負担を少しずつ調整しながら進める必要があります。
Q.物忘れや集中力低下は何科に相談すればよいですか?
A.脳神経内科、内科、リハビリテーション科などが相談先になります。強い不安や
抑うつがある場合は、心療内科や精神科との連携も大切です。
【那覇市・浦添市・沖縄県でブレインフォグにお悩みの方へ】
シーサー通り内科リハビリクリニックは、那覇市にある内科・脳神経内科・
リハビリテーション科のクリニックです。
新型コロナ感染後の物忘れ、集中力低下、頭痛、めまい、強い疲労、睡眠障害など、
ロングCOVIDが疑われる症状についてご相談いただけます。
当院では、脳神経内科専門医による診察に加え、必要に応じて血液検査、頭部CT、
睡眠検査、認知機能評価などを行い、症状の背景を確認します。
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が在籍しており、患者さんの状態に応じて、
日常生活や社会復帰を意識したリハビリテーションを検討します。
那覇市、浦添市、沖縄県で、コロナ後のブレインフォグや物忘れ、集中力低下に
お困りの方は、シーサー通り内科リハビリクリニックへご相談ください。
まとめ
ロングCOVIDに伴う認知機能低下に対し、患者さん自身が選んだ生活目標へ
取り組む認知リハビリは、日常生活の改善につながる可能性があります。
大切なのは、検査の点数だけではなく、仕事、家事、外出など「何に困っているか」
を明確にし、その人に合った対策を一緒に考えることです。
症状を気合いや努力不足の問題と考えず、適切な評価と無理のない支援を受ける
ことが、生活を取り戻すための第一歩になります。
引用・参考文献
Vanova M, Patel AMR, Scott I, et al.
Cognitive Rehabilitation and Functional Outcomes in Long COVID–Related
Cognitive Impairment: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Network Open. 2026;9(7):e2620687.
doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.20687
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2836426
