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心臓手術後の「せん妄」を血液検査で予測?アミロイドβと脳の最新研究

高齢の方が手術を受けたあと、急に「ここがどこか分からない」
「夜中に落ち着かなくなる」といった状態になることがあります。

これは術後せん妄と呼ばれ、認知症とは異なり、手術などをきっかけに
意識や注意力が短期間で大きく変動する状態です。

特に心臓手術では珍しくなく、高齢者では重要な合併症の一つです。
心臓手術後の患者さんの最大約25%に起こるとの報告があります。

2026年、『JAMA Network Open』に、手術前の血液検査によって
術後せん妄のリスクを捉えられる可能性を示した研究が発表されました。

注目されたのが、アルツハイマー病研究でも使われる血液中の
**アミロイドβ1-40(Aβ1-40)**というたんぱく質です。

【術後せん妄とは?高齢者の心臓手術で注意したい脳の変化】

術後せん妄では、注意力が低下したり、会話がかみ合わなくなったり、
昼夜が逆転したり、見えないものが見えるなどの症状が現れることがあります。

一方で、ぼんやりして会話が少なくなる「低活動型」のせん妄もあり、
単に疲れているように見えるため、気付かれにくいことがあります。

せん妄は一時的な場合もありますが、入院期間の延長や周術期合併症、
死亡リスク、さらに長期的な認知機能低下との関連が報告されています。

今回の研究では、ドイツで予定心臓手術を受けた50歳以上の患者さんを
前向きに調査し、491人について術後せん妄を詳しく評価しました。

平均年齢は68.4歳で、491人のうち106人、21.6%が術後せん妄を
発症しました。つまり、およそ5人に1人という結果です。

手術前には血液を採取し、Aβ1-40、Aβ1-42、pTau181、pTau217など、
アルツハイマー病研究で注目される複数の物質を測定しました。

【アミロイドβ1-40と術後せん妄|血液から脳の弱さが見える?】

研究で最も注目された結果が、Aβ1-40と術後せん妄との関係です。

術後せん妄を起こした患者さんでは、Aβ1-40の平均値が442.5pg/mL、
起こさなかった人では389.6pg/mLと、前者で高くなっていました。

さらに年齢、糖尿病、手術内容などを考慮した解析でも、
Aβ1-40が高いことは術後せん妄と独立して関連していました。

Aβ1-40が1標準偏差高くなると、術後せん妄を起こすオッズは
約1.9倍でした。術前の認知機能を考慮しても関連は残っています。

ただし、ここで「アミロイドβが高ければせん妄になる」と
単純に考えることはできません。

Aβ1-40単独での予測能力を表すAUCは0.65であり、
これだけで一人ひとりの発症を正確に予測できる水準ではありません。

年齢や糖尿病、手術時間などの臨床情報と血液バイオマーカーを組み合わせると
AUCは0.74、認知機能検査も加えると0.77まで改善しました。

つまり将来的には、血液検査+認知機能+病歴を組み合わせて、
せん妄リスクを総合的に評価する方法につながる可能性があります。

【術後せん妄と認知症予防|手術前から「脳の予備力」を考える】

興味深いのは、Aβ1-40が単純なアルツハイマー病の指標というより、
「脳が手術のストレスにどれだけ耐えられるか」を反映している可能性です。

研究者らは、Aβ1-40が脳血管障害や血液脳関門の働きなどと関連し、
手術前から存在する脳血管の弱さを示している可能性を考えています。

これは「認知機能検査が正常なら脳は大丈夫」とは限らない、
という点でも興味深い結果です。

将来的には、手術前にリスクが高い人を見つけ、睡眠、脱水、薬剤、
疼痛、感染症など、せん妄を悪化させる要因をより注意深く管理することで、
発症予防につなげられる可能性があります。

ただし今回の研究は1施設で行われ、対象も心臓手術患者に限られます。
現時点でAβ1-40を一般診療のせん妄予測検査として使う段階ではありません。

研究者自身も、予測能力の改善は限定的であり、Aβ1-40単独を
スクリーニング検査として使用することには慎重な立場を示しています。

今回の研究が伝えている重要なメッセージは、手術前から
「心臓だけでなく脳の状態も評価する」ことの重要性だといえるでしょう。

よくある質問 Q&A

Q.術後せん妄になると認知症になってしまうのですか?
A.必ず認知症になるわけではありません。ただし術後せん妄は、
その後の認知機能低下と関連するため、発症予防と早期対応が大切です。

Q.術後せん妄と認知症は同じですか?
A.違います。せん妄は数時間~数日のうちに急に起こり、症状が変動します。
認知症は通常、数か月~数年かけて認知機能が低下していきます。

Q.血液のアミロイドβを測れば術後せん妄を予測できますか?
A.現時点ではAβ1-40だけで正確に予測することはできません。
年齢、病気、認知機能などを組み合わせることが重要と考えられます。

Q.手術前にできることはありますか?
A.認知機能や服薬状況、睡眠状態、持病などを確認しておくことが重要です。
物忘れが気になる場合は、手術前に医師へ伝えておくとよいでしょう。

シーサー通り内科リハビリクリニックから

「最近物忘れが増えた」「以前より反応が遅くなった」などの変化は、
年齢だけの問題ではなく、脳の健康状態を示すサインかもしれません。

シーサー通り内科リハビリクリニックでは、内科・脳神経内科・
リハビリ科の視点から、物忘れや認知機能低下を総合的に評価しています。

沖縄県・那覇市で物忘れ、認知症、歩行障害などが気になる方や、
持病を含めて脳の健康を相談したい方は、お気軽にご相談ください。

引用文献

von Arnim CAF, Sadlonova M, Derad C, et al.
Plasma Amyloid-β 1-40 and Postoperative Delirium After Cardiac Surgery.
JAMA Network Open. 2026;9(7):e2625730. Published July 28, 2026.
doi: 10.1001/jamanetworkopen.2026.25730

DOI:
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2026.25730