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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の最新治療2026|遺伝子治療とリハビリ、多職種医療を沖縄県那覇市の脳神経内科専門医が解説
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?
初期症状・診断・最新治療をわかりやすく解説
「最近、片手に力が入りにくい」「よくつまずく」「ろれつが回りにくい」。
こうした症状にはさまざまな原因がありますが、ALSが隠れていることがあります。
ALSは「筋萎縮性側索硬化症」と呼ばれる神経の病気です。
2026年、医学誌JAMAにALSの診断・治療をまとめた最新レビューが掲載されました。
ALSは決して頻度の高い病気ではありませんが、早い段階で専門医につながり、
症状に合わせた治療やリハビリを始めることが非常に重要な病気です。
【ALSの初期症状|痛みのない筋力低下から始まる】
ALSでは、脳から筋肉へ「動け」と命令を送る運動ニューロンという神経細胞が、
徐々に障害されることで、筋肉を動かしにくくなっていきます。
特徴の一つが、基本的には「痛みを伴わずに筋力が低下する」ことです。
多くの場合、最初から全身ではなく、一部分の筋力低下として始まります。
JAMAのレビューでは、約65%が手足の筋力低下から発症するとされています。
「箸が使いにくい」「ボタンが留めにくい」「足先が上がらない」などが典型例です。
足先が上がらなくなると、何もない場所でつまずいたり、
スリッパが脱げやすくなったりすることがあります。
一方、20~25%程度では、話しにくさや飲み込みにくさから始まります。
医学的には「球症状」と呼び、舌や喉を動かす筋肉の障害によって起こります。
さらに5~10%程度では、体幹の筋力低下によって、
姿勢をまっすぐ保ちにくくなることなどから発症するとされています。
ALSでは、筋肉が細くなる「筋萎縮」や、
筋肉がピクピク動く「線維束性収縮」がみられることもあります。
ただし、これらの症状があるからといってALSとは限りません。
首や腰の病気、末梢神経障害など、似た症状を起こす病気は数多くあります。
【ALSの診断と遺伝子|脳神経内科での評価が重要】
ALSは、一つの血液検査だけで診断できる病気ではありません。
症状の経過と神経学的診察を組み合わせて総合的に診断します。
診察では、筋力低下だけでなく、筋肉の萎縮、腱反射の変化、
筋肉の硬さなど「上位・下位運動ニューロン」の障害を詳しく調べます。
必要に応じて行われるのが「筋電図検査」です。
筋肉に伝わる電気信号を調べ、運動神経が障害されていないかを確認します。
また、MRIや血液検査などを行い、
頸椎症や末梢神経疾患などALSに似た別の病気を除外することも大切です。
近年、特に注目されているのがALSと遺伝子との関係です。
JAMAのレビューでは、ALSに関連する遺伝子は60種類以上報告されています。
ALSの約85%は明らかな家族歴を認めない「孤発性」、
約15%は家族内で発症する「家族性」とされています。
家族性ALSではC9orf72という遺伝子の異常が約40%、
SOD1遺伝子の異常が約20%にみられると報告されています。
遺伝子によっては治療選択につながる時代になってきました。
そのため今後、ALS診療における遺伝学的検査の重要性はさらに高まるでしょう。
【ALS治療とリハビリ|多職種で生活を支える】
現時点ではALSを完全に治す治療法は確立されていません。
しかし、「治療法がない」という意味ではありません。
JAMAレビューでは、米国でリルゾールとエダラボンが
ALSの進行を緩やかにする治療薬として使用されています。
またSOD1遺伝子変異を持つALSに対しては、
トフェルセンという遺伝子を標的とした治療が米国FDAで承認されています。
これは特定の遺伝子異常を狙った治療であり、
ALS治療が「患者さんごとに原因を調べて治療する時代」に向かう象徴ともいえます。
なお、薬剤の承認状況や適応は国によって異なります。
日本で受けられる治療については脳神経内科専門医への確認が必要です。
ALS診療で薬物治療と同じくらい重要なのが、
呼吸、栄養、コミュニケーション、リハビリを含めた総合的な支援です。
JAMAレビューでは、神経内科医、看護師、リハビリスタッフ、
栄養士、ソーシャルワーカーなどによる多職種診療が重要とされています。
専門的な多職種チームによる診療は、生活の質を改善するだけでなく、
生存期間の延長とも関連することが報告されています。
リハビリでは、単純に「強く筋肉を鍛えればよい」わけではありません。
疲労や筋力低下の程度を見ながら、安全な運動量を設定することが重要です。
理学療法士による歩行や移動の評価、作業療法士による日常生活動作の工夫、
言語聴覚士による会話・嚥下への支援などを組み合わせます。
ALSでは病状の変化に合わせて、その時点で必要な支援を先回りして考えることが、
患者さんとご家族の生活を守るうえで非常に大切です。
よくある質問(Q&A)
Q1.筋肉がピクピクします。ALSでしょうか?
A.筋肉のピクつきだけでALSと診断することはできません。
疲労、睡眠不足、ストレスなどでも起こります。筋力低下や筋萎縮を伴う場合は、
脳神経内科で相談することをおすすめします。
Q2.ALSは遺伝する病気ですか?
A.約85%は明らかな家族歴のない孤発性ALSとされています。
一方、約15%は家族性であり、C9orf72やSOD1など複数の遺伝子が関係します。
Q3.ALSは治療できないのでしょうか?
A.現在、完全に治す治療法はありませんが、進行を遅らせる薬物療法や、
呼吸・栄養管理、リハビリなどによって生活を支える治療があります。
Q4.どのような症状なら脳神経内科を受診すべきですか?
A.片手だけ力が入りにくい、足先が上がらずつまずく、筋肉が痩せてきた、
ろれつや飲み込みが悪化するなど、進行する症状があれば一度ご相談ください。
シーサー通り内科リハビリクリニックより
那覇市のシーサー通り内科リハビリクリニックでは、
内科・脳神経内科・リハビリテーション科の視点から診療を行っています。
「手足に力が入りにくい」「筋肉が痩せてきた」「よくつまずく」
「ろれつが回りにくい」など、神経の症状は早めの評価が大切です。
ALSだけでなく、頸椎症、末梢神経障害、脳血管障害、筋疾患など、
似た症状を起こすさまざまな病気を考えながら診察する必要があります。
当院では医師による神経学的評価に加えて、必要に応じて
PT・OT・STなどリハビリ専門職と連携しながらサポートします。
「この程度で脳神経内科を受診してよいのだろうか」と迷う症状でも、
どうぞお気軽にご相談ください。
参考文献
Ravits J, Ferrey D, Gundogdu B, et al.
Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Review.
JAMA. 2026;335(22):1970-1982.
doi:10.1001/jama.2026.6385
JAMA掲載ページ:
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2848974
PubMed:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42113599/
