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多発性硬化症・視神経脊髄炎脳神経内科

多発性硬化症とフレイルの関係|治療・リハビリの新しい視点

高齢化する多発性硬化症患者に「フレイル」の視点が重要な理由

多発性硬化症(MS)は若年成人に発症する神経難病として知られていますが、近年では高齢化が進み、「フレイル」と呼ばれる虚弱状態が注目されています。本記事では、フレイルがMSに与える影響と、治療やリハビリにおける新たな視点をご紹介します。

【フレイルとは何か?】

フレイルとは、「加齢などにより体の力や回復力が低下し、病気やケガに対して弱くなった状態」を指します。英語の「frailty(虚弱)」が語源です。

医学的には以下の2つの考え方が主流です。

  • Friedのフレイル基準:体重減少、歩行速度の低下、疲れやすさ、筋力低下、活動量の減少の5項目のうち3つ以上が該当すると「フレイル」と診断されます。
  • 臨床的フレイルスケール(Clinical Frailty Scale):認知機能や移動能力、家事や金銭管理など、日常生活全体の「できる度合い」を評価します。

フレイルは一度進行すると、転倒や入院、要介護状態のリスクが高まります。しかし、早期に気づき、適切な対応をすれば改善できる「可逆的な状態」である点も大きな特徴です。

【なぜ多発性硬化症とフレイルが関係するのか?】

MSは、脳や脊髄に慢性の炎症や脱髄(神経のカバーが壊れる現象)を引き起こす病気です。近年、MSの患者さんにも高齢化が進み、65歳以上の方が約20%を占めるという報告もあります。

そして、以下のようなMSの特徴が、フレイルと密接に関係しています。

  • 病気の長期化:長く付き合う病気であるため、体力や筋力の低下が進みやすい。
  • 進行型MSの存在:再発を伴わず徐々に悪化するタイプのMSでは、フレイルのリスクが高まります。
  • 多様な症状:疲労感、歩行障害、睡眠障害など、MS自体がフレイルの原因になりうる症状を持っています。

そのため、フレイルの有無を確認しながら、MSの治療計画を立てることが求められています。

【フレイルを見据えたMSの治療とリハビリ戦略】

治療のリスクとバランス

フレイルのあるMS患者さんは、免疫力の低下や内臓機能の弱まりにより、副作用のリスクが高まります。特に注意が必要なのは以下の点です。

  • 高リスクの薬剤(DMTs):免疫を抑える治療は、感染や副作用のリスクを高める可能性があります。
  • ステロイド治療:再発時の治療で使われることが多いですが、骨粗しょう症や糖尿病を悪化させることがあります。
  • 多剤併用(ポリファーマシー):複数の病気を抱えることで、薬の数が増え、副作用や相互作用が問題となります。

治療のゴールは「病気のコントロール」と「生活の質(QOL)の維持・向上」を両立させること。そのためにも、「安全性」や「自立支援」に重きを置いた個別の方針が重要です。

リハビリの個別化がカギ

フレイルのある患者さんでは、以下のような点を意識したリハビリが有効です。

  • 低強度で安全性を重視した運動
  • 徐々に負荷を増やすプログラム
  • 栄養管理や心理的サポートの併用
  • チーム医療(医師・理学療法士・管理栄養士など)の活用

逆に、フレイルがないMS患者さんでは、より積極的なリハビリ(中〜高強度の運動)によって、機能改善や再発予防が期待されます。

【まとめ:フレイルを意識したMS管理のこれから】

多発性硬化症の治療は、再発の予防や進行抑制にとどまらず、「その人の生活全体」を支える時代に入っています。

特に高齢のMS患者さんにおいては、フレイルの視点を取り入れることが、転倒・入院・介護状態を防ぐ鍵となります。今後は、MSに特化したフレイル評価法の確立や、電子カルテと連動したスクリーニングの導入などが進むことで、より質の高い個別ケアが実現するでしょう。

【参考文献】

  • Correale J. Frailty and Implications for Multiple Sclerosis Management. JAMA Neurol. 2025;82(7):637-638. doi:10.1001/jamaneurol.2025.0023
  • Canevelli M, et al. Lancet Neurol. 2024;23(11):1147-1157.
  • Al Worikat N, et al. Mult Scler Relat Disord. 2024;92:106157.
  • Hvid LG, et al. Mult Scler J Exp Transl Clin. 2021;7(1):2055217321989384.

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