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睡眠時無呼吸と肺がんの驚きの関係性
【女性は特に注意!COPDと睡眠時無呼吸が肺がんリスクに影響】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)と睡眠時無呼吸症候群(以下、睡眠時無呼吸)は、どちらも呼吸に関わる慢性疾患です。今回ご紹介する研究では、これらの病気が重なることで、特に女性において肺がんリスクが高まる可能性があることが示されました。
【COPDと睡眠時無呼吸が同時にあると何が起こる?】
COPDとは、咳や痰、息切れなどが続く呼吸器の病気で、主に喫煙や大気汚染が原因です。一方、睡眠時無呼吸は、寝ている間に呼吸が止まる病気で、酸素不足を繰り返すことから、身体に慢性的な炎症を起こします。
ベルギーで行われたこの研究では、62,903人のCOPD患者のデータを用いて、睡眠時無呼吸の有無と肺がん発症率を性別に分けて分析しました。
【女性ではリスク上昇、男性ではむしろ低下?】
研究の結果、次のような性別による違いが明らかになりました。
- 女性のCOPD患者では、睡眠時無呼吸がある人の方が、肺がんを発症するリスクが31%高くなっていました。
- 特に、肺気腫、貧血、脳血管障害など、低酸素と関係する持病を持つ女性では、リスクはさらに高まっていました(最大2.65倍)。
- 男性のCOPD患者では、睡眠時無呼吸がある人の方が、むしろ肺がんリスクが18%低下していました。
このような差は、性ホルモンや炎症反応の違いが関与していると考えられています。
【なぜ女性だけリスクが高まるのか?その理由】
この研究では、女性の方が睡眠時無呼吸に伴う全身性の炎症反応が強いことが指摘されています。
- 女性は同じ重症度の無呼吸でもCRP(炎症マーカー)やフィブリノーゲンの上昇が顕著。
- 肺高血圧症の合併も多く、酸素不足による影響が強く現れやすいとされています。
- また、女性は閉経後に無呼吸の重症度が増すことや、診断が遅れやすいこともリスクを高める要因とされます。
男性では、軽度の無呼吸がむしろ一部の免疫応答を刺激する可能性があるものの、無呼吸が重症になるとその保護効果は消失する傾向が見られました。
【対策は?特に女性のCOPD患者に必要な注意点】
この研究から得られる実践的なメッセージは明確です。
- 女性のCOPD患者で日中の眠気やいびきがある場合は、睡眠時無呼吸の検査を受けるべきです。
- 睡眠時無呼吸の診断がついたら、早期にCPAP(持続陽圧呼吸療法)や酸素療法を導入することが勧められます。
- さらに、低用量CTによる肺がんスクリーニングを積極的に行うことで、早期発見につながる可能性があります。
【引用文献】
Proesmans K, Luik AI, Lahousse L. Sex-specific associations between sleep apnoea and lung cancer risk in patients with COPD: a nationwide prospective cohort study. Lancet Regional Health – Europe. 2025;52:101269. https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2025.101269
【当院でもCOPDと睡眠時無呼吸の検査・治療に対応しています】
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、CTによるCOPDの診断・管理はもちろん、睡眠時無呼吸の簡易検査や精密検査(PSG)にも対応しています。その後のCPAP療法も可能です。「日中眠い」「いびきが気になる」「呼吸が苦しい」といった症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
