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パーキンソン病にウイルスが関係?ヒトペギウイルスの意外な影響とは
パーキンソン病は手足の震えや動作の鈍さといった症状を引き起こす神経の病気で、高齢者を中心に増加しています。遺伝だけでなく環境要因も関与するとされる中、最近、注目を集めているのが「ヒトペギウイルス(HPgV)」というウイルスです。
今回は、2025年に発表された最新の研究から見えてきた、パーキンソン病とHPgVの関係をご紹介します。
【HPgVとは?】知らないうちに感染しているかもしれないウイルス
ヒトペギウイルス(HPgV)は、かつて「GBウイルスC」とも呼ばれていたRNAウイルスで、C型肝炎ウイルスに近い仲間です。世界中に広く存在しており、健康な人でも1〜5%が感染しているとされます。
感染経路は主に血液や体液を介したもので、輸血や注射器の共用、性行為、母子感染などがあります。症状はほとんど出ないため、多くの人が自分の感染に気づきません。
HPgVは主にリンパ球などの免疫細胞に感染し、体内で長期間にわたり潜伏することがあります。かつては「無害なウイルス」と考えられていましたが、近年、免疫機能や神経疾患との関連が注目されるようになっています。
【最新研究】パーキンソン病患者の脳でHPgVを発見
2025年、アメリカの研究グループが、パーキンソン病患者と健常者の脳を比較する研究を発表しました。その中で、パーキンソン病患者の脳からは50%の割合でHPgVが検出されましたが、健常者の脳からはまったく検出されませんでした。
さらに、HPgVが検出された患者では以下の特徴が見られました。
- 神経変性の進行度(Braakステージ)が高い
- 神経伝達物質の放出に関わるタンパク質(Complexin-2)が増加
- 血液中の免疫や代謝のバランスが変化(IGF-1増加、pS65ユビキチン減少)
- 免疫調整に関わるIL-4という物質の働きが変化
これらは、ウイルス感染が神経の働きや病気の進行に影響を与えている可能性を示しています。
【感染+遺伝】病気の進み方は人によって違う?
今回の研究では、パーキンソン病の原因となる「LRRK2」という遺伝子に注目した解析も行われました。
その結果、HPgVに感染した患者のうち、LRRK2遺伝子に変異がある人とない人では、免疫の反応がまったく逆になることがわかりました。例えば、IL-4の働きが強まる人もいれば、逆に抑えられる人もいたのです。
このように、「ウイルス感染」と「遺伝的な体質」が組み合わさることで、病気の進み方や重症度が変わる可能性があります。
まとめ:HPgVは「原因」か、それとも「悪化要因」か?
ヒトペギウイルスは、これまであまり注目されてこなかったウイルスですが、今回の研究により、パーキンソン病の進行に関わっている可能性が浮かび上がってきました。
もちろん、HPgVがパーキンソン病を「引き起こす」決定的な証拠はまだありません。しかし、「病気の一部の人では進行を早めているかもしれない」という視点は、今後の治療や予防にも影響を与えるでしょう。
病気の背景にはさまざまな要因が絡み合っていることが、改めて実感される研究結果でした。
引用文献
Hanson BA et al. Human pegivirus alters brain and blood immune and transcriptomic profiles of patients with Parkinson’s disease. JCI Insight. 2025;10(13):e189988. https://doi.org/10.1172/jci.insight.189988
