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インフルエンザで子どもが重篤な脳症に?米国で報告された急性壊死性脳症とは
インフルエンザが引き起こす重い脳障害
【急性壊死性脳症(ANE)とは】
インフルエンザにかかった後、子どもが急に意識を失い、けいれんを起こす――。
これは「インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)」という非常にまれで重篤な神経疾患の可能性があります。
2025年7月に発表された米国の全国規模の研究では、2023~2025年のインフルエンザシーズン中に41名の子どもがIA-ANEと診断され、そのうち27%が死亡し、生存者の6割以上に中等度以上の障害が残るという深刻な結果が報告されました。
特に注目すべきは、多くの子どもが以前は健康だったにもかかわらず、このような重篤な経過をたどったことです。
【発症のきっかけ・症状・画像診断の特徴】
この脳症は、インフルエンザ感染後に急激に発症し、以下のような特徴を示します。
- 発熱と呼吸器症状が先行し、その数日後に意識障害やけいれんを発症
- MRIやCTで視床や脳幹に特徴的な壊死性変化を認める
- 多くの症例で肝機能障害、血小板減少、髄液中のたんぱく上昇を伴う
41例中39例がインフルエンザA型に感染しており、そのうち14例は2009年型H1N1でした。
さらに、脳幹病変は88%に認められ、死亡例の91%は脳ヘルニアが原因でした。
【治療と予後、そして予防の重要性】
この研究では、以下のような多剤併用の免疫療法が実施されました。
- 高用量ステロイド(95%)
- 免疫グロブリン(66%)
- トシリズマブ(51%)、血漿交換療法(32%)なども一部使用
にもかかわらず、致死率は27%、生存者の63%は90日後も中等度以上の後遺症を抱えていました。
一部の子どもは歩行・会話・食事に介助が必要で、学校復帰が難しいケースも多く報告されています。
しかしながら、この深刻な病気の多くはワクチンで予防可能です。対象者のうち、季節性インフルエンザワクチンを接種していたのはわずか16%でした。
【保護者・医療者へのメッセージ】
この研究は、インフルエンザが単なる「風邪」ではなく、時に命や将来にかかわる重篤な合併症を引き起こすことを示しています。
インフルエンザ関連急性壊死性脳症(IA-ANE)はあくまで稀な疾患ですが、
- 高熱と意識障害がみられた場合はすぐに救急受診を
- インフルエンザ流行期は予防接種を最優先に
- 特に乳幼児期や小学校低学年のお子さんはハイリスク
ということを、ぜひご家族や地域の方々に知っていただきたいと思います。
【当院でも予防と早期対応に力を入れています】
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、小児から高齢者まで、インフルエンザや感染症による脳神経合併症の早期診断と予防啓発に力を入れています。
インフルエンザワクチンの接種も実施しておりますので、ご希望の方はお早めにご予約ください。
【参考文献】
- Silverman A, Walsh R, Santoro JD, et al.
Influenza-Associated Acute Necrotizing Encephalopathy in US Children.
JAMA. Published online July 30, 2025.
▶ 論文本文はこちら(JAMA公式)
