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多発性硬化症は血液検査で見分けられる? EBウイルス抗体の最新研究を解説
多発性硬化症は血液検査で見分けられる?
EBウイルス抗体の最新研究をわかりやすく解説
多発性硬化症は、脳や脊髄、視神経などに炎症が起こる
自己免疫の病気です。若い世代にもみられ、しびれや脱力、
見えにくさ、ふらつきなど、さまざまな症状が出ます。
ただし、この病気は診断が簡単ではありません。
なぜなら、似た症状を示す病気として、
NMOSDやMOGADがあるからです。
NMOSDは「視神経脊髄炎スペクトラム障害」、
MOGADは「MOG抗体関連疾患」と呼ばれます。
どちらも脳や脊髄、視神経に炎症を起こす病気です。
これらは治療方針が異なるため、
最初にできるだけ正確に見分けることが大切です。
そこで注目されているのが、血液中のEBウイルス抗体です。
【EBウイルス抗体とは? 多発性硬化症との関係】
EBウイルスは、多くの人が一度は感染するとされる
ごくありふれたウイルスです。
成人の多くが、過去の感染歴を持っていると考えられます。
最近では、このEBウイルスが
多発性硬化症の発症に深く関わる可能性があるとして、
世界的に研究が進んでいます。
今回の研究で調べられたのは、
EBウイルスの中でもEBNA-1という成分に対する抗体です。
抗体とは、体が異物に反応して作る目印のようなものです。
研究では、多発性硬化症、MOGAD、NMOSDの患者さんの血液を
複数回にわたって調べ、EBNA-1抗体が高い状態が
続くかどうかを比較しました。
その結果、多発性硬化症では
この抗体が高い状態で続く人がとても多く、
MOGADやNMOSDではかなり少ないことが示されました。
つまり、EBNA-1抗体を繰り返し測ることで、
多発性硬化症を見分ける手がかりになる可能性があります。
【MS・NMOSD・MOGADの鑑別に役立つ最新研究】
この研究には、神経の炎症性疾患をもつ多数の患者さんと、
健康な人が含まれていました。
解析対象は非常に大規模で、信頼性の高い設計です。
特に注目されたのは、4回の測定のうち
2回以上で高いEBNA-1抗体が続いていた人の割合です。
多発性硬化症では、その割合が非常に高くなっていました。
一方で、MOGADやNMOSDでは
そのような高値の持続はかなり少なく、
両者の差ははっきりしていました。
さらに興味深いのは、
NMOSDのなかでも典型的な抗体が陰性だった患者さんでも、
EBNA-1抗体は多発性硬化症との区別に役立った点です。
実際の診療では、MRIや髄液検査、症状の経過、
血液中の自己抗体などを総合して診断します。
それでも判断が難しい場面は少なくありません。
そのようなときに、
EBウイルス抗体の情報が加われば、
より診断の精度が高まる可能性があります。
【血液バイオマーカーが変える神経免疫疾患の診断】
今回の研究が重要なのは、
単に「抗体が高いかどうか」だけでなく、
時間をあけて何度も測る点にあります。
1回だけの検査では偶然の変動もありえますが、
高い値が持続しているかを見ることで、
より病気の特徴をつかみやすくなるからです。
こうした血液の目印は、
バイオマーカーと呼ばれます。
これは病気の存在や特徴を示す手がかりのことです。
今後、こうしたバイオマーカーが実用化されれば、
多発性硬化症とよく似た病気の区別がしやすくなり、
より適切な治療選択につながることが期待されます。
ただし、この検査だけで
すべての診断が決まるわけではありません。
あくまで補助的な情報として使うことが大切です。
症状、画像検査、神経診察、既存の抗体検査と組み合わせて、
総合的に判断することが今後も基本になります。
それでも、血液検査という比較的負担の少ない方法で
診断を助ける材料が増えることは、
患者さんにとって大きな前進といえます。
多発性硬化症やNMOSD、MOGADは、
早く正確に診断することが治療の第一歩です。
この研究は、その精度向上に期待を持たせる内容でした。
当院からのお知らせ
手足のしびれ、力が入りにくい、見えにくい、
ふらつく、原因不明の神経症状が続く場合は、
脳神経内科での評価が大切です。
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、
内科・脳神経内科の専門的視点から、
神経症状の診察や必要な検査のご相談に対応しています。
那覇市・浦添市・沖縄県で
しびれ、脱力、視覚症状、神経疾患が心配な方は、
どうぞお気軽にご相談ください。
引用文献
- Vietzen H, Kühner LM, Berger SM, et al.
Epstein-Barr Virus Antibodies to Differentiate Multiple Sclerosis From Other Neuroinflammatory Diseases.
JAMA Neurology. Published online March 9, 2026.
doi:10.1001/jamaneurol.2026.024
