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帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎が日本で3倍以上に増加
―「発疹がないから大丈夫」とは限りません―
「帯状疱疹」と聞くと、多くの方は皮膚に痛みを伴う水ぶくれができる病気を
思い浮かべるのではないでしょうか。しかし、注意すべき合併症があります。
帯状疱疹を起こす**水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)**は、まれではありますが、
脳やその周囲にまで影響し、「髄膜炎」を起こすことがあります。
2026年、日本の全国規模の入院データを解析した研究が発表され、
VZV髄膜炎の発症率が12年間で3倍以上に増えていたことが報告されました。
今回は、この研究から分かった「帯状疱疹と髄膜炎」の重要なポイントを、
できるだけ分かりやすく解説します。
【帯状疱疹ウイルスによる髄膜炎が日本で3倍以上に増加】
今回の研究では、日本のDPCという全国規模の入院データベースを利用し、
2011年4月から2023年3月までのVZV髄膜炎患者が調べられました。
解析対象となった成人患者は1680人です。平均的な年間発症率は、
人口10万人あたり0.25人と、決して頻度の高い病気ではありませんでした。
しかし注目すべきなのは、その増え方です。2011年には10万人あたり0.13人
だった発症率が、2022年には0.46人まで上昇していました。
つまり、わずか12年間で3倍以上に増えたことになります。論文の3ページに
掲載されたグラフでも、特に2016年以降の上昇傾向がはっきり確認できます。
ただし、単純に「帯状疱疹ウイルスが急に強くなった」という意味ではありません。
日本では2016年からPCR検査が保険適用となり、髄液の中にウイルスの遺伝子が
あるかを詳しく調べられるようになったことも、増加の一因と考えられています。
つまり、以前は原因不明のウイルス性髄膜炎とされていた患者さんの中から、
VZVが原因だったケースを見つけやすくなった可能性があります。
【帯状疱疹の発疹がなくても「強い頭痛・発熱」には注意】
VZVは、子どものころに水ぼうそうを起こした後も体内から完全には消えません。
神経の近くに潜伏し、免疫力が低下したときなどに再び活動を始めます。
再活性化によって起こる代表的な病気が帯状疱疹ですが、VZVは髄膜炎だけでなく、
脳炎、脊髄炎、脳神経障害、血管炎などを起こす場合もあります。
ここで非常に大切なのが、皮膚の発疹がないVZV髄膜炎もあるという点です。
論文では、過去の研究からVZV髄膜炎の40%以上で皮膚の発疹を伴わない場合が
あることが紹介されています。そのため診断が難しいケースがあります。
「帯状疱疹らしい発疹がないから、帯状疱疹ウイルスではない」とは
必ずしも言い切れないということです。
髄膜炎では、強い頭痛、発熱、吐き気などがみられることがあります。
意識状態が悪くなる場合には、髄膜炎だけでなく脳炎も考える必要があります。
研究では患者の年齢中央値は55歳でしたが、年齢別の発症率は特徴的でした。
50~59歳で最も低く、80歳以上で最も高いという「V字型」を示しており、
若い世代でも発症する点には注意が必要です。
【VZV髄膜炎の治療と予後|アシクロビルによる抗ウイルス治療】
VZV髄膜炎と診断された場合、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬による
治療が行われます。
今回の研究では、患者の96.4%が初期治療として点滴のアシクロビルを
使用していました。治療開始は入院当日が中央値でした。
アシクロビルとは、ヘルペスウイルスの増殖を抑える薬です。点滴治療の
期間中央値は11日で、約89%が7日以上の長期治療を受けていました。
一方で、VZV髄膜炎に対する最適な治療期間については、まだ明確な結論が
出ていません。現在の治療は脳炎の治療指針を参考にしている面があります。
点滴アシクロビルでは腎機能への影響にも注意する必要があり、年齢や腎機能を
考慮しながら投与量を調整することが重要です。
幸い、この研究では入院中の死亡率は0.8%でした。また退院時に日常生活動作を
示すBarthel Indexが90点以上だった患者は87.4%でした。
つまり、多くの患者さんは良好な状態で退院できています。
ただし高齢であること、神経症状が重いこと、多くの持病を抱えていることなどは、
重症化と関連する可能性が示されており、早期診断・早期治療が重要です。
よくあるご質問 Q&A
Q1.帯状疱疹になると髄膜炎になるのでしょうか?
いいえ。VZV髄膜炎はまれな合併症です。ただしVZVは皮膚だけでなく、
髄膜、脳、脊髄など神経系にも影響することがあります。
Q2.皮膚に発疹がなくてもVZV髄膜炎になりますか?
はい。VZV髄膜炎では、発疹を伴わないケースも報告されています。
強い頭痛や発熱などがある場合は、発疹だけで判断しないことが大切です。
Q3.VZV髄膜炎は治りますか?
今回の日本の研究では入院死亡率は0.8%で、多くの患者さんが良好な
日常生活機能を保って退院していました。ただし重症化する場合もあります。
Q4.強い頭痛と発熱がある場合はどうすればよいですか?
普段経験しないほど強い頭痛、高熱、繰り返す嘔吐、意識がおかしいなどの
症状がある場合には、髄膜炎や脳炎も考え、早めの医療機関受診が必要です。
シーサー通り内科リハビリクリニックからのお知らせ
那覇市のシーサー通り内科リハビリクリニックでは、一般内科に加えて、
脳神経内科の専門的な視点から頭痛やしびれ、神経症状の診療を行っています。
「いつもの頭痛とは違う」「帯状疱疹のあとに頭痛が続く」
「発疹と一緒に神経症状が出てきた」といった場合もご相談ください。
特に突然の激しい頭痛、高熱、意識障害、けいれんなどがある場合は、
緊急性の高い病気の可能性があるため、速やかな救急受診が必要です。
帯状疱疹は「皮膚だけの病気」とは限りません。
気になる症状があるときは、早めに医療機関へ相談することが大切です。
参考文献・引用情報
Yamagata N, Kimura Y, Matsui H, Fushimi K, Yasunaga H.
Increasing incidence of varicella-zoster virus meningitis in Japan, 2011–2022.
Journal of the Neurological Sciences. 2026;488:126074.
Published online June 29, 2026.
DOI:10.1016/j.jns.2026.126074
https://doi.org/10.1016/j.jns.2026.126074
