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脳卒中脳神経内科

重症脳梗塞でもあきらめない時代へ|血栓回収療法で1年後の自立度が改善

大きな脳梗塞でも血栓回収療法は有効?TESLA試験「1年後」の最新結果

「脳梗塞の範囲がかなり広いと、血栓回収療法をしても効果が少ないのでは?」

以前は、そのように考えられ、治療の対象にならない患者さんも少なくありませんでした。

しかし近年、大きな脳梗塞であっても、条件を満たせば血栓回収療法によって
その後の生活機能が改善する可能性が次々と報告されています。

2026年8月、医学誌『JAMA』に、TESLA試験の1年後の成績が発表されました。
今回は、その結果を一般の方にもわかりやすく解説します。

【大きな脳梗塞と血栓回収療法|TESLA試験とは】

脳梗塞は、脳の血管が血栓によって詰まり、脳に血液が届かなくなる病気です。

特に太い血管が突然詰まる「主幹動脈閉塞」では、短時間のうちに広い範囲の脳が
障害され、重い麻痺や言語障害、意識障害につながることがあります。

血栓回収療法とは、カテーテルという細い管を血管内から脳まで進め、
詰まった血栓を直接取り除いて血流を再開させる治療です。

TESLA試験では、発症前にはほぼ自立していた18~85歳の患者さんを対象に、
発症から最長24時間までのケースが検討されました。

対象は、内頸動脈または中大脳動脈が閉塞し、通常の頭部CTで
ASPECTS 2~5という比較的大きな脳梗塞を認めた患者さんです。

ASPECTSとは、頭部CTを使って脳梗塞の広がりを評価する方法です。
点数が低いほど、すでに障害されている脳の範囲が広いことを示します。

この研究の特徴は、高度な灌流CTなどではなく、一般的な単純CTだけを使って
治療対象を選んだ点にもあります。

高度な画像検査が十分に利用できない地域でも、治療対象を広げられる可能性があり、
脳卒中診療の地域格差を考えるうえでも重要な研究です。

【血栓回収療法で1年後の自立度が改善|23.6%対6.8%】

今回とくに注目したいのは、治療から「1年後」の生活機能です。

1年間の評価が可能だった患者さんでは、血栓回収療法群144人と、
内科的治療群133人が比較されました。

日常生活を自立して送れる状態、すなわちmRS 0~2となった割合は、
血栓回収療法群で23.6%、内科的治療群では6.8%でした。

mRSとは、脳卒中後の障害の程度を0~6段階で評価する指標です。
0は症状なし、6は死亡を意味します。

つまり、大きな脳梗塞であっても血栓回収療法を受けた患者さんでは、
1年後に自立して生活できる割合が明らかに高かったのです。

さらに、「自分で歩ける」レベルに相当するmRS 0~3の割合は、
血栓回収群35.4%に対して、内科治療群18.0%でした。

健康関連QOLを評価するEQ-5D-5Lも、血栓回収療法群のほうが良好でした。

一方、1年後の死亡率は血栓回収群43.1%、内科治療群46.6%で、
統計学的に明確な差は認められませんでした。

つまり今回の結果は、「死亡を大きく減らした」というより、
生存した患者さんの機能や生活の質を改善した可能性を示しています。

【脳梗塞は時間との勝負|大きな梗塞でも「あきらめない」】

TESLA試験には、結果を読むうえで大切な注意点があります。

もともとのTESLA試験では、90日後に設定されていた主要評価項目について、
血栓回収療法が統計学的に優れているという基準を満たしていませんでした。

今回の1年後の成績は、あらかじめ予定されていた長期評価ではありますが、
著者らも「探索的・記述的な結果」として慎重に解釈しています。

それでも、SELECT2やTENSIONなど他の研究も含め、大きな脳梗塞でも
血流を早く再開させる意義があるという知見は着実に積み重なっています。

興味深いのは、脳卒中の回復が「3か月で終わる」とは限らないことです。

脳には「神経可塑性」と呼ばれる、残った神経回路が働き方を変えたり、
新しいネットワークを作ったりする力があります。

適切な急性期治療に加えて、その後のリハビリテーションを続けることで、
数か月から1年にわたって機能が改善する患者さんもいます。

ただし、「大きな脳梗塞なら誰でも血栓回収療法を受けられる」という意味ではありません。

発症時刻、閉塞血管、脳梗塞の範囲、年齢、発症前の生活状態などを総合して、
脳卒中専門医が迅速に治療適応を判断する必要があります。

顔のゆがみ、片側の手足の力が入らない、言葉が出ないなどの症状が突然出た場合は、
様子を見ず、できるだけ早く119番へ連絡してください。

よくある質問 Q&A

Q.大きな脳梗塞でも血栓回収療法を受けられますか?

A.可能な場合があります。以前より治療対象は広がっていますが、
CT所見、閉塞している血管、発症時間などを専門医が判断します。

Q.発症してから24時間以内なら治療できますか?

A.すべての患者さんが24時間まで治療できるわけではありません。
ただし、条件を満たせば発症から時間が経過していても対象になる場合があります。

Q.血栓回収療法をすれば元通りになりますか?

A.必ず元通りになる治療ではありません。しかし今回の研究では、
1年後に自立できる割合や歩行できる割合が高くなりました。

Q.脳梗塞の症状が出たらクリニックへ行けばよいですか?

A.突然の麻痺、言葉の障害、顔のゆがみなど急性脳卒中が疑われる場合は、
クリニックを受診するより、まず119番へ連絡することが重要です。

シーサー通り内科リハビリクリニックより

シーサー通り内科リハビリクリニックでは、脳神経内科・内科・リハビリテーションの
視点から、脳卒中の「予防」と「その後の生活」を総合的にサポートしています。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動などは、脳梗塞の重要な危険因子です。
脳梗塞を起こしてからではなく、発症前から管理することが何より重要です。

また脳梗塞後の麻痺、歩きにくさ、筋肉のつっぱり、言語障害などについても、
PT・OT・STによるリハビリテーションを含めてご相談いただけます。

那覇市・浦添市をはじめ沖縄県内で、脳梗塞後のフォローや再発予防、
神経症状について気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

※突然の麻痺・言語障害・意識障害など、急性脳卒中が疑われる場合は、
当院への来院ではなく、直ちに119番へ連絡してください。

参考文献

Zaidat OO, Al Kasab S, Sheth SA, et al; TESLA Investigators.
One-Year Outcomes After Endovascular Treatment for Large Acute Ischemic Stroke:
The TESLA Randomized Clinical Trial.

JAMA. Published online August 3, 2026.
doi:10.1001/jama.2026.12814.