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心筋梗塞は認知症リスクにも関係?「隠れ心筋梗塞」と認知機能低下の最新研究
「心筋梗塞」と聞くと、突然の胸の痛みや息苦しさなど、心臓の病気という
イメージが強いと思います。しかし、その影響は心臓だけではない可能性があります。
2026年、米国心臓協会の医学誌『Stroke』に、心筋梗塞の既往がある人では、
その後の認知機能低下が速い可能性を示す大規模研究が報告されました。
さらに注目したいのは、本人が心筋梗塞を経験したことを知らない
「無症候性心筋梗塞」でも、同様の傾向が認められたことです。
【心筋梗塞と認知症|2万人を約10年間追跡した研究】
今回の研究では、米国の大規模研究「REGARDS」に参加した20,923人を対象に、
心筋梗塞の既往と、その後の認知機能の変化との関係が調べられました。
参加者は、心筋梗塞の経験を本人が申告した場合だけでなく、心電図に残る
「Q波」という変化から、過去の心筋梗塞が疑われる場合も分類されました。
つまり、「心筋梗塞をしたと知っている人」だけでなく、本人には自覚がないものの、
心電図から過去の心筋梗塞が疑われる人についても調べた点が特徴です。
心筋梗塞の所見があった人は2,183人で、そのうち804人は本人に心筋梗塞の
認識がない「無症候性心筋梗塞」でした。
研究では年齢、性別、高血圧、糖尿病、喫煙、心房細動など、多くの要因を
統計的に調整しても、心筋梗塞の既往と認知機能低下との関連が残りました。
心筋梗塞があった人では、認知機能障害へ移行する確率も年ごとに高くなり、
研究者らは心筋梗塞が将来の認知機能低下を知る手掛かりになり得るとしています。
【隠れ心筋梗塞|胸が痛くなくても心臓に傷が残ることがある】
特に興味深いのが「無症候性心筋梗塞」です。心筋梗塞というと強い胸痛を
想像しますが、すべての人に典型的な症状が現れるとは限りません。
過去の研究では、こうした自覚されていない心筋梗塞は、心筋梗塞全体の
22~44%を占める可能性があると報告されています。
今回の研究でも、無症候性心筋梗塞がある人では、心筋梗塞のない人に比べ、
全般的な認知機能が時間とともに速く低下する傾向が確認されました。
なぜ心臓の病気が脳に影響するのでしょうか。原因はまだ完全には
分かっていませんが、「心臓と脳に共通する血管の問題」が重要と考えられます。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などは、冠動脈だけでなく脳の細い血管にも
ダメージを与え、脳梗塞や認知機能低下につながる可能性があります。
研究ではほかにも、全身の炎症、脳への血流低下、目立たない小さな脳梗塞、
アミロイドというたんぱく質の排出低下などが候補として挙げられています。
ただし、この研究は「心筋梗塞が認知症を直接引き起こす」と証明した研究では
ありません。あくまで心筋梗塞と認知機能低下に「関連」が認められた研究です。
【認知症予防と心電図|心臓を守ることは脳を守ることにもつながる】
今回の結果から大切なのは、「認知症予防は脳だけを見ればよいわけではない」
という点です。心臓や血管の健康管理も、脳の健康と深く関係しています。
特に高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙などを放置しないことは、
心筋梗塞や脳卒中だけでなく、将来の認知機能を考える上でも重要です。
また、「昔、胸が苦しかったけれど放置した」「糖尿病が長い」「動脈硬化を
指摘されている」という方では、一度心臓や血管を確認する意味があります。
一方、心電図だけで過去のすべての心筋梗塞を発見できるわけではありません。
今回の論文でも、心電図は過去の心筋梗塞を見つける感度が十分ではないことが
研究上の限界として挙げられています。
したがって「認知症が心配だから全員が心電図検査を受ければよい」という
単純な話ではなく、年齢や生活習慣病、症状などを総合して判断することが大切です。
心臓、血管、そして脳は別々の臓器ではありません。血管を介してつながった
一つのシステムとして考え、若いうちから血圧や血糖、コレステロールを整える。
それが将来の「心臓と脳を一緒に守る」ことにつながります。
よくある質問(Q&A)
Q.胸痛がなければ心筋梗塞の心配はありませんか?
A.いいえ。症状がはっきりしない無症候性心筋梗塞もあります。ただし、
心電図だけですべてを発見できるわけではないため、総合的な判断が必要です。
Q.心筋梗塞になると認知症になるのでしょうか?
A.今回の研究は認知症になることを直接証明したものではありません。
心筋梗塞の既往がある人で、認知機能低下が速い「関連」が示された研究です。
Q.認知症予防のために何をすればよいですか?
A.血圧、血糖、コレステロール、運動、禁煙など、動脈硬化の原因を
適切に管理することが、心臓と脳の両方を守る基本になります。
シーサー通り内科リハビリクリニックから
当院では、内科・脳神経内科・リハビリテーション科の視点から、
高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病と脳・心血管疾患を診療しています。
「最近物忘れが気になる」「動脈硬化が心配」「心電図について相談したい」など、
気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
認知症だけ、心臓だけを見るのではなく、心臓・血管・脳を一緒に守ることを
大切にしながら、将来の脳卒中や認知機能低下の予防につなげていきます。
引用・参考文献
Ridha M, Nahid M, Levitan EB, et al.
Prior Myocardial Infarction and Cognitive Decline: The REGARDS Cohort.
Stroke. 2026;57:1683-1693.
DOI: 10.1161/STROKEAHA.125.053444
https://doi.org/10.1161/STROKEAHA.125.053444
