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肺炎や重い感染症の後は認知症に注意?33万人を追跡した研究結果を那覇市の認知症専門医が解説
感染症は、発熱や咳などの一時的な体調不良だけでなく、その後の脳の健康にも
影響する可能性があります。特に高齢者では、肺炎や尿路感染症などをきっかけに、
一時的な混乱や認知機能の低下がみられることがあります。
2026年に医学誌「Brain, Behavior, and Immunity」に掲載予定の研究では、
入院治療が必要だった感染症と、その後の認知症発症との関係が検討されました。
英国の大規模な医療データを解析した結果、感染症による入院歴がある人では、
認知症の発症率が高いことが示されました。さらに、実年齢以上に身体の老化が
進んでいる人では、その関連がより強くなる可能性も報告されています。
【感染症と認知症リスク―33万人を13年以上追跡】
今回の研究では、英国の大規模研究「UKバイオバンク」に登録された、
37~73歳の男女33万9463人が対象となりました。
参加者は平均13.51年間追跡され、その間に5638人が認知症を発症しました。
感染症と認知症の診断は、本人への質問だけでなく、入院記録などの医療情報を
用いて確認されています。
解析の結果、入院治療を必要とした感染症があった人では、感染症による入院歴が
ない人と比べ、認知症を発症するリスクが約2.39倍高いという関連がみられました。
対象となった認知症には、すべての認知症だけでなく、アルツハイマー病、
血管性認知症、若年性認知症も含まれています。
若年性認知症とは、一般に65歳未満で発症する認知症です。今回の研究では、
多くの種類の感染症が若年性認知症とも関連していました。
ただし、この結果は「感染症にかかると必ず認知症になる」という意味では
ありません。また、軽い風邪まで同じ危険性があると示した研究でもありません。
研究で評価されたのは、主に入院治療を必要とする比較的重い感染症です。
感染症の重症度、もともとの病気、生活習慣などが認知症リスクに影響した
可能性も考慮する必要があります。
【生物学的老化が感染後の認知症に関係する可能性】
今回注目されたもう一つの要素が「生物学的年齢」です。実際の年齢が同じでも、
身体の老化の進み方には個人差があります。
生物学的年齢とは、血液検査や臓器の状態などから推定される、身体の老化度を
示す考え方です。研究では複数の血液データを用いて「表現型年齢」が算出されました。
例えば、実年齢が60歳でも、代謝や炎症、臓器機能の状態から、身体がより高齢に
近いと推定される場合があります。これを老化の加速と表現します。
研究では、生物学的老化が進んでいる人ほど、感染症による入院と認知症発症との
関連が強くなっていました。感染症と老化の相互作用を示す指標は1.20でした。
感染症が起こると、身体では免疫反応が活性化し、多くの炎症物質が作られます。
重い感染症では、この炎症が全身に及び、血管や脳にも影響する可能性があります。
また、感染症に伴う低酸素、脱水、血圧低下、血液が固まりやすくなる変化などが、
脳の神経細胞や細い血管に負担をかけることも考えられます。
一方、生物学的老化が進んだ人では、炎症から回復する力や、傷ついた組織を
修復する能力が低下している可能性があります。
そのため、同じ感染症を経験しても、老化が進んでいる人ほど脳への影響が
残りやすいという仮説が考えられます。ただし、詳しい仕組みはまだ確定していません。
【感染予防と認知症予防―今からできる対策】
今回の研究から、感染症を予防し、重症化を防ぐことが、将来の認知症予防にも
つながる可能性が考えられます。
重要なのは、年齢や持病に応じて、インフルエンザ、新型コロナ、肺炎球菌、
帯状疱疹などのワクチン接種を検討することです。
ワクチンで感染を完全に防げない場合でも、重症化や入院を減らせる可能性が
あります。特に高齢者、糖尿病、心臓病、肺疾患がある方では重要です。
日頃から口腔ケアを行い、歯周病や誤嚥性肺炎を予防することも大切です。
十分な栄養、適度な運動、質のよい睡眠も免疫機能を支えます。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙は、血管性認知症や脳卒中の危険因子です。
これらを適切に管理することは、身体の老化を抑えるうえでも重要です。
感染症の後に物忘れが急に増えた、会話がかみ合わない、歩きにくくなった場合は、
年齢のせいと決めつけず、医療機関へ相談しましょう。
高齢者では、感染症に伴って「せん妄」が起こることがあります。せん妄とは、
急に意識や注意力が乱れ、落ち着きがなくなったり、反応が鈍くなったりする状態です。
せん妄は認知症とは異なりますが、もともとの認知機能低下を発見するきっかけに
なる場合があります。感染症の治療後も症状が続く場合には評価が必要です。
【よくある質問・Q&A】
Q.風邪をひいただけでも認知症リスクが2倍になりますか?
A.今回の研究は、主に入院治療を必要とした感染症を対象としています。
一般的な軽い風邪に同じ数値をそのまま当てはめることはできません。
Q.感染症が直接、認知症を起こすのでしょうか?
A.直接的な原因と証明されたわけではありません。炎症、血管障害、持病、
身体の弱りなど、複数の要因が関係している可能性があります。
Q.感染後に物忘れが増えた場合、すぐ認知症でしょうか?
A.感染症や入院後の体力低下、薬の影響、せん妄でも認知機能は低下します。
症状が続く場合は、認知機能検査や血液検査などをご相談ください。
Q.認知症予防のために最も大切なことは何ですか?
A.感染予防だけでなく、血圧、血糖、脂質、運動、睡眠、禁煙、社会参加などを
組み合わせて管理することが大切です。
【那覇市・浦添市・沖縄県で物忘れや感染後の体調変化が心配な方へ】
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、内科・脳神経内科・認知症診療の
専門的な視点から、物忘れ、注意力低下、歩行障害などを総合的に評価しています。
認知機能検査、血液検査、脳CT、頸動脈エコーなどを組み合わせ、認知症だけでなく、
脳卒中、甲状腺疾患、睡眠障害、感染症後の体調変化も確認します。
那覇市・浦添市をはじめ沖縄県内で、感染症の後から物忘れが目立つ方、
認知症予防やワクチンについて相談したい方は、シーサー通り内科
リハビリクリニックへお気軽にご相談ください。
【引用情報】
Ding R, Zhang T, Liu G, Huang Y, Zhao M, Luo Y, et al.
Infection and increased risk of incident dementia:
the role of biological aging.
Brain, Behavior, and Immunity. 2026;137:106862.
