ブログ

脳神経内科認知症

認知症は血液検査で早期発見できる?p-tau217とAβ42/40を認知症専門医が解説

「将来、認知症になるかどうかを血液検査で調べられるのでしょうか?」
最近、このような質問をいただく機会が増えてきました。

アルツハイマー病の診断は今、大きく変わろうとしています。
その中心にあるのが「血液バイオマーカー」という新しい検査です。

2026年には、認知機能に問題のないアジア人を対象として、
血液検査の有用性を調べた新しい研究結果が報告されました。

今回は注目されている「p-tau217」と「Aβ42/40」について、
認知症診療の今後も含めて、できるだけわかりやすく解説します。

【① アルツハイマー病と血液検査|p-tau217とは?】

アルツハイマー病では、症状が現れるかなり前から脳の中に
「アミロイドβ」というたんぱく質が少しずつ蓄積します。

さらに病気が進むと、「タウ」と呼ばれるたんぱく質にも異常が起こり、
神経細胞が障害され、記憶力などが徐々に低下すると考えられています。

これまで脳内のアミロイドβを詳しく調べるには、
アミロイドPETという特殊な画像検査などが必要でした。

しかし近年、採血によってアルツハイマー病に関連する変化を
推測できる「血液バイオマーカー」の研究が急速に進んでいます。

特に注目されているのが「p-tau217」です。

p-tau217とは、リン酸化タウ217という物質のことで、
アルツハイマー病に伴う脳内変化を反映する指標の一つです。

もう一つが「Aβ42/40」です。

これは血液中の2種類のアミロイドβの比率を見る検査で、
脳へのアミロイドβ蓄積を推測する手掛かりになります。

【② 認知症になる前にわかる?アジア人2,566人の研究】

2026年にAgeing Research Reviewsに発表された研究では、
認知機能が正常なアジア人を対象とした9研究が解析されました。

対象となったのは合計2,566人で、血液中のp-tau217や
Aβ42/40と、アミロイドPETの結果との関連が調べられました。

結果は非常に興味深いものでした。

検査の識別能力を示す「AUC」という数値は、
p-tau217が0.88、Aβ42/40が0.86でした。

AUCは1に近いほど、目的とする状態を見分ける能力が高いことを
示す指標です。どちらも良好な識別能力を示したことになります。

さらに複数の血液バイオマーカーを組み合わせると、
AUCは約0.92まで上昇しました。

つまり将来的には採血を入口として、脳内にアミロイドβが
蓄積している可能性を評価できる時代が近づいているのです。

一方で、とても大切な注意点があります。

「血液検査が陽性=認知症」という意味ではありません。

今回の研究対象は、認知機能に明らかな問題がない人たちです。
脳内に変化があっても、生涯認知症を発症しない場合もあります。

研究者も、検査方法の標準化や将来を見据えた追跡研究などが
さらに必要であると指摘しています。

【③ 認知症の早期発見|血液検査をどう活用する?】

認知症診療では、「できるだけ早く気づく」ことの重要性が
以前より高くなっています。

現在はアルツハイマー病の原因の一つであるアミロイドβを標的とする
抗アミロイド抗体薬も登場し、診断方法そのものが変化しています。

一方、血液バイオマーカーは非常に期待される検査ですが、
現時点で健康な方全員に行う一般的な検診ではありません。

2025年に発表されたAlzheimer’s Associationの診療指針も、
主に認知機能低下が疑われる人を専門医が評価する場面を対象としています。

「最近同じ話を何度もする」「以前できていたことに時間がかかる」
などの変化があれば、まず専門医による診察が大切です。

認知機能検査だけでなく、必要に応じて血液検査やCT・MRIなどを行い、
脳血管障害など別の病気が隠れていないかを確認します。

認知機能低下の原因はアルツハイマー病だけではありません。

脳梗塞、甲状腺疾患、ビタミン不足、睡眠障害、薬剤など、
治療可能な原因が関係していることもあるためです。

将来、血液バイオマーカーがさらに普及すれば、
「採血から始める認知症・アルツハイマー病診療」が
より身近なものになる可能性があります。

【よくある質問 Q&A】

Q.p-tau217が高ければアルツハイマー病ですか?

A.それだけでは診断できません。症状や認知機能検査、
画像検査などを含め、総合的に判断することが重要です。

Q.症状がなくても検査を受けた方がよいですか?

A.現時点では、健康な方全員への一律の検査は推奨されていません。
検査を希望する場合は、メリットと注意点を専門医と相談しましょう。

Q.物忘れがあれば、すぐ認知症なのでしょうか?

A.年齢による物忘れと認知症は同じではありません。
睡眠不足、薬剤、うつ状態などでも記憶力は低下することがあります。

Q.認知症は予防できますか?

A.完全に防ぐ方法はありませんが、高血圧・糖尿病・脂質異常症、
運動不足、喫煙などへの対策は脳の健康を守るうえで重要です。

【那覇市で物忘れ・認知症が気になる方へ】

シーサー通り内科リハビリクリニックでは、内科・脳神経内科・
リハビリテーションの視点から、物忘れや認知症の相談を行っています。

「年齢のせいなのか、認知症の始まりなのかわからない」という段階でも
お気軽にご相談ください。

認知症だけを見るのではなく、高血圧、糖尿病、脂質異常症、
睡眠障害や脳血管障害なども含めて総合的に評価することが大切です。

那覇市をはじめ、浦添市や沖縄県内で物忘れや認知症について
気になることがありましたら、早めの相談をご検討ください。

【参考文献】

Terao I, Kodama W.
Plasma p-Tau217 and Aβ42/40 for identifying amyloid PET positivity in
cognitively unimpaired Asian individuals: A systematic review and meta-analysis.
Ageing Research Reviews. 2026;119:103173.
DOI:10.1016/j.arr.2026.103173

Alzheimer’s Association.
Clinical Practice Guideline: Blood-Based Biomarkers in Specialty Care.
2025.