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高齢者の運転事故リスクを減らすには?同乗者の存在がもたらす安心の理由

🚗高齢ドライバーを支える「同乗者」の力:認知機能と事故リスクの最新研究

高齢になっても車を運転する方は多くいらっしゃいます。
特に地方では、車が生活の足として欠かせません。
しかし年齢を重ねると、認知機能や判断力の低下が進むことがあり、事故のリスクが心配されます。

今回、75歳以上の運転者を対象に行われた大規模研究で、「同乗者がいるだけで事故責任リスクが減る」という興味深い結果が明らかになりました。

この記事では、同乗者の存在と事故リスクの関係を3つの観点から解説します。

研究の背景:高齢運転者と認知機能の課題

高齢者は認知症や軽度認知障害(MCI)が増える世代です。
認知症とは、記憶や判断力が低下し、日常生活に支障をきたす病気です。

日本では75歳以上のドライバーが免許更新のたびに「認知機能検査」を受けることが義務づけられています。
この検査で認知症が疑われると、医師による診断が必要です。
診断の結果、認知症と判断されると免許が取り消されたり停止される場合もあります。

ただ、運転をやめることは生活の自由を大きく制限します。
地方では公共交通が少なく、買い物や通院も困難になりがちです。
運転を続けるためには、認知機能を支え、安全を確保する工夫が求められます。

近年は自動ブレーキやペダル踏み間違い防止装置などの技術が普及しつつありますが、すべての車に導入されるには時間がかかります。
その中で注目されているのが「同乗者のサポート」です。

研究方法と結果:同乗者が事故を減らす理由

この研究では、日本全国の警察が報告した事故データと運転免許データを活用しました。
対象は2014年から2020年までに事故に関与した75歳以上のドライバーです。

研究の特徴は、事故を起こした責任の有無で比較した点です。
具体的には、事故の責任があるドライバーと、責任がないドライバーに分け、同乗者がいた割合を調べました。

結果、同乗者がいると責任事故のリスクが大きく低下することがわかりました。
男性では同乗者がいると事故の責任リスクが約57〜64%減少
女性ではさらに大きく、約68〜70%減少していました。

興味深いのは、この傾向は認知症が疑われる人、軽度認知障害の人、認知機能が正常な人のどのグループでも一貫していたことです。

つまり「認知機能の低下に関わらず、同乗者がいるだけで事故のリスクは下がる」ことが示されました。

安全運転を支えるヒント:同乗者と新しい支援策

では、なぜ同乗者がいると事故が減るのでしょうか?

研究者たちは、同乗者が「もう少しゆっくり行こう」「赤信号だよ」と声をかけることで注意が促されると考えています。
また、同乗者がいることで緊張感や慎重さが高まり、無意識の油断を防ぐ可能性があります。

海外でも同様の傾向が確認されており、アメリカの一部の州では、認知機能に不安がある高齢者に「同乗者をつけて運転する条件付き免許」を交付しています。

もちろん、同乗者だけですべての危険がなくなるわけではありません。
適切な休憩、無理のない運転計画、最新の安全装置も重要です。

これからの高齢ドライバー支援では「テクノロジーと人の協力」が両輪になるでしょう。
同乗者がいることは、すぐに始められるシンプルで有効な手段の一つです。

まとめ:運転の自由と安全のバランスを大切に

今回の研究は、同乗者が高齢者の安全運転を支える重要な存在であることを示しています。

日本では、認知症と診断された場合は運転免許の停止や取消しが法律で定められており、運転を継続することは認められていません。

一方で、認知機能が低下していない方や軽度の認知機能低下にとどまる方は、周囲の支援を受けながら安全に運転を続けることが可能です。

高齢の方だけでなく、ご家族や地域の方も一緒に考え、支え合うことが大切です。

運転の安全を守る工夫を、ぜひ今日から意識してみてください。

【引用文献】

Ichikawa M, et al. Association between the presence of passengers and at-fault crash risk among older drivers with and without cognitive decline. Journal of Safety Research. 2025.
https://doi.org/10.1016/j.jsr.2025.04.002