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脳卒中後のうつ・不安に効く?早期の心理療法が回復の鍵
【脳卒中後のうつ・不安は「よくあること」だからこそ対策が重要】
脳卒中を経験した人の約3人に1人は「うつ」、4人に1人は「不安症状」に悩まされるといわれています。
これらの心の問題は、身体のリハビリだけでなく、日常生活の質(QOL)や回復速度にも大きく影響します。
今回紹介するイギリスの大規模研究では、脳卒中を経験した約7,600人を対象に、実際の医療現場で行われた心理療法の効果を検証しました。
結果、心理療法により「中等度のうつ症状の改善」と「顕著な不安症状の軽減」がみられました。
さらに、脳卒中から「6か月以内」に心理療法を開始した方が、回復率が高く、悪化リスクも低いことがわかりました。
【心理療法で本当に回復するの?―具体的な効果とは】
この研究では、うつ症状は「PHQ-9」、不安症状は「GAD-7」という信頼性の高い尺度を用いて評価されました。
その結果、脳卒中経験者においては以下の変化が確認されました:
- PHQ-9(うつ)のスコア:15.8 → 9.3(中等度改善)
- GAD-7(不安)のスコア:13.4 → 7.9(大きな改善)
- 社会生活機能のスコア(WSAS):19.7 → 13.2(中等度改善)
さらに、治療後に「症状が明らかに改善した」と判定された人は全体の約7割、
「症状が基準値未満まで改善した」と判定された人も約5割に達しました。
この結果は、英国政府が掲げる「50%の回復率目標」を達成する水準と一致しており、
実際の医療現場での心理療法の有効性を裏付ける重要なデータです。
【早めの介入が鍵―受診までの期間が回復率に影響】
興味深いことに、脳卒中を発症してから心理療法を開始するまでの時間が、
その後の「回復率」や「悪化リスク」に大きく関係していることも判明しました。
具体的には:
- 脳卒中から6か月以内に治療開始した人に比べ、
12か月以上経ってから治療を始めた人は回復率が約20%低下 - 早期開始グループは、不安とうつのスコアともに改善幅が大きかった
- 発症から時間が経つにつれて、心理療法の効果はやや減少する傾向
つまり、「様子をみよう」と受診を遅らせることで、
せっかくの治療チャンスを逃してしまう可能性があるということです。
早期に精神的なサポートを受けることが、心と体の回復を同時に後押しするのです。
【まとめ:心のケアはリハビリの一部です】
今回の研究は、イギリス全土の保険診療データを活用し、
実際に診療を受けた人の現実的な治療効果を示したものであり、信頼性の高い内容です。
脳卒中のリハビリと聞くと、歩行訓練や言語訓練など「身体のリハビリ」に注目が集まりがちですが、
「こころのリハビリ」も同じくらい重要です。
ご家族やご本人が、「最近ふさぎこみがち」「不安が強い」などの様子に気づいたら、
遠慮せず、かかりつけ医や専門医に相談してみてください。
心理療法は、「こころの痛み」への確かな治療法です。
【引用文献】
- Suh, J. W. et al. (2025). A record-linkage study of post-stroke primary care psychological therapy effectiveness in England. Nature Mental Health, 3, 626–635. https://doi.org/10.1038/s44220-025-00429-z
- NICE Stroke Rehabilitation Guideline NG236. National Institute for Health and Care Excellence.
- NHS Talking Therapies Manual 2023
